88歳のAさんは91歳のお父さん
共に認知症ですが二人っきりで暮らしています
Aさんは完全に寝たきりです。一人で横を向く事も出来ないのです。
しかも去年、認知症のお父さんが電気あんかをひと晩中(強)で足の下に入れていたため
自分で足を動かす事の出来ないお母さんの両足は大やけど
膝から下を両足とも切断することになってしまいました。
もう、2年ほど家から1っ歩も出た事のないAさんを
なんとか外に出してあげたいと思い、スタッフ全員のお弁当を作り
公園でみんなで歌を歌い、2年ぶりのお日さまに当たってもらう事が出来ました。
5月の末(詳しくは5月30日の陽ちゃんのブログを見てね)
この頃から、乳がんの末期で、いつ何が起きてもおかしくない状態でした。
もしかしたら、この外出が体に大きな負担をかけてしまうのではないか?と言う不安
それでも、今思うと、この時最後の外出をさせてあげられて
本当に、良かったなぁ~って思います
土曜日の夕方、訪問したヘルパーより、訪問時にお父さんが無理やりAさんに
ヤクルトを飲ませている
Aさんはのどに何か詰まっているようで、苦しそうです。との緊急連絡が入ってきました。
すぐに主治医への連絡とAさんを側臥位(横向け)にし、背部殴打による異物除去法を指示し
Aさん宅へ車を走らせた。
陽ちゃんが到着の少し前には担当のDrも休日なのに駆けつけて来てくれていました。
息子さんにも連絡を取り、救急車の要請の許可をいただく。
このときのお父さんは「ヘルパーがお昼に何も食べさせてないから俺が食べさせたんや」と
怒鳴りながら叫んでいました。
もちろん、朝昼夕、すべてミキサー食(すりつぶし)にしてヘルパーが介助しています。
お父さんの認知症は、現在5分前のことを忘れてしまう状況です。
朝9時にヘルパーが訪問しても、自分がご飯を食べた後に時計を見て9時15分なら
「遅いやないか! こんな時間に来やがって!! 9時15分やないか!!」と怒鳴ります。
9時に来て、食事の用意したでしょ~って説明しても理解してもらえません。
逆上しすぎて、包丁や椅子を振りかざす時もあります。
そんなお父さんですから、Aさんの苦しそうな様子が理解できるわけもありません。
Aさんのことを奥さんだと理解できる日や勝手に陽ちゃんがよそのおばちゃんを連れてきた。
と怒鳴る日があったり・・・
それでも、勝手なときは何かと世話を焼きたがり、返って危険な毎日でした。
お父さん用の普通食をそのまま口に入れているときも何度か・・・・
何しろ、お母さんが全く動けないので、何一つ抵抗することが出来ないのですから・・・
土曜日に救急搬送されたAさんは誤嚥性肺炎により翌日曜の朝3時に危篤状態になり
病院から連絡をもらったご家族はお父さんを連れて病院に行き、みんなで最後を看取ったそうです。
なのに、お父さんはすべてのことを忘れています。
現在は
「Aさんが女の癖に勝手に出て行きやがった!」
「長男が病院に連れて行ったから安心や。昨日も笑っとったわ」
「Aさんの隠し子が現れて、無理やり連れて行きやがった!」
などなど
毎回、訪問するたびに話が変わります。
Aさんが白い紫陽花の花言葉《寛容》が当てはまっていると思うところは
昔、結婚した頃 お姑さんと同居をしていたそうです。
すごく厳しい嫁いびりにあっていたそうです。
それなのに、お父さんは外での女遊びを繰り返し、お金も家に入れなくて
問題ばかり起こしていたそうです。
生活を支えるためにお母さんが二人の子供を育てながら働き
お父さんの女遊びもすべて許してきたそうです。
それはお姑さんへの意地もあったとAさんの昔を知る方が教えてくれました。
Aさんは12年前に陽ちゃんが介護をさせていただいた頃から認知症でした。
きっと、お父さんのわがままな行動を受け止め切れなかったんだと陽ちゃんは思いました。
忘れるしかないんだと・・・・
ある意味認知症のAさんはお父さんを恨む事もなく、ヘルパーと一緒に歌を歌いながら
穏やかな生活を楽しんでおられました。
お父さんの認知症が悪化するまでは・・・・
お父さんの認知症は、これまた勝手な認知症で
若い頃はさんざんお母さんをないがしろにして泣かしてきたくせに
今では 勝手なときだけAさんの顔を撫で回し、キスの雨を降らせ・・・
そのたびにAさんは迷惑そうな顔をしています
そして、Aさんが痛がったり、何かしゃべろうものなら
勝手に自分の薬を飲ませて眠らせてみたり・・・・
今回のように、食べれないものまで口の中に入れたり・・・・
これからどんどん増えていくであろう認知症の高齢者
こんな現実が陽ちゃんたちにも起こるかもしれない。
今回は、陽ちゃんたちは、出来る限りのことをAさんにして上げてきたし
最後の時を覚悟しながらの毎日の介護でした。
Aさんが旅立った悲しみよりは
Aさん、お疲れ様♪ お父さんのことは任せてね♪
天国でゆっくり、のびのびと暮らしてくださいね♪
そんな、思いで見送ってあげることが出来ました。
一人残された認知症のお父さんが、これからどうなっていくのか
いっそのこと、Aさんの死を理解できないまま、Aさんのことを忘れてしまえば
穏やかに笑って暮らせることが出来るのだろうか?
今は毎日 話す内容の違うお父さんの言葉に寄り添いながら
1日も早く お父さんの笑顔を取り戻せるように支援していきます。
冷たい雨に打たれても笑っているかのように咲いている
白い紫陽花のようなAさん
安らかにお眠りください (合掌)