認知症の高齢のご夫婦がお二人で生活されていて
先日、お母さんが亡くなられました。
お父さんは、最後を看取ったにも関わらず、覚えていません
ヘルパーが訪問する度に話が変わります
「おかあさんは 病院か?」
「若い娘が来て連れて行った」
「わしが、ベットにもぐりこんだから出て行った」
などなど・・・・
そして、いよいよお母さんの介護ベットを引き上げる日が来ました。
理解出来ないお父さんはきっと大暴れで血圧が上がる事は間違いない。
そこで
お父さんの外出中にベットを引き上げることを企みました(苦笑)
陽ちゃんが、説得するも、「なんで わしが出ていかなあかんのや」と怒鳴り
なかなか、動いてくれません
着替えてもらうことは諦め、パジャマのままで無理やり車に乗ってもらいました。
そして、向かった先は
「あべのハルカス」
日本一高いビル♪
男性CMと二人っきりでのお出かけです♪
その間に陽ちゃんと杉かなちゃんで、ベットを業者さんに引き上げてもらい
掃除機をかけ、ベットがあった事を忘れるように
タンスを動かし、お母さんの衣類を片付け、お母さんの気配を消しました(苦笑)
限りある時間のなかで、流れ出る汗をタオルで拭く時間も無く
来ている服の裾で顔を拭きながら、大掃除!!
息子さん二人に立ち会ってもらったのですが、息子さんと言えども65歳を過ぎているお二人
ただ、見ているだけ(苦笑)
タンスを動かすと40年分の埃が・・・・・(ゴホゴホ)
その頃、ハルカスのお父さんは、普段は当日券が買えないほど入場者が並んでいるそうですが
この日は、すぐに当日券が買えたそうです。
陽ちゃんもスタッフの誰もが上った事のない60階まで行ったそうです♪
「こんな高いところ 初めて来たわ~」
「あっちが大阪城か?」
「通天閣なんか、屁みたいやなぁ~」
そして、陽ちゃんと杉かなちゃんは、なんとかお父さんが帰宅するまでに部屋をかたずけ
ゴミを45Lのゴミ袋6つほど出し、いつもどおりに晩御飯の準備をして・・・・
息子さん達は、お父さんが機嫌が悪いだろうと、逃げ出すように自分の家に帰って行った
杉かなちゃんは次の利用者宅へ向かい、陽ちゃんだけが残された
外で車の到着を待ち、帰宅したお父さんに「どこへ行ってきたの~??」って声をかけると
ニッコニコの笑顔で
「ええ所に連れて行ってもろたわぁ~」
「60階まで上がったんや」
「あんなの初めてやったわぁ~」
と興奮しながら、いっぱいしゃべってくれます♪
いきなり連れ出され、怒っているのではないか!って言う思いとは逆に
こんな笑顔見た事が無いって顔を見せてくれました。
さて、部屋に入ると
ベットを思い出して、また怒鳴るんじゃないかと 恐る恐る部屋の中へ・・・・
「こんなに綺麗にしてくれたんか?」
「あんなええ所に連れて行ってもらって、部屋まで片付けてくれてありがとう♪」
何と、陽ちゃんに深々と頭を下げるのです
あ~~~
このお父さんの笑顔と、こんなお礼の言葉が聞けるのなら
40年のほこりなんて体中に汗と共に貼りついたってかまわない!!
この笑顔のおかげで
認知症で包丁を持ち出したり、ヘルパーにコップを投げつけたり
毎日 毎日怒鳴られたって
そんな事、すべて許せてしまいました(笑)
今も、お父さんはお母さんの事を「入院したんか?」って聞いてきます
ヘルパーは
「入院したところまでは知っているけど、その後の事は息子さんに聞いてね」って答えます
「亡くなったのよ。お葬式も済んだでしょ~」って答えても
それすら忘れてしまうお父さん
それなら、これ以上にかなしい思いをさせる必要はない!!
これからは、楽しい思い出をいっぱい話してあげたい
また、機会があれば、今度は陽ちゃんも一緒にハルカスに行って
この笑顔を 直接みたいですね♪
しっかし
パジャマのままでハルカスに上るのは、このお父さんぐらいですね(笑)